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インボイス制度とは?(1/2)-消費税法改正のポイント2-

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軽減税率が実施される2019年10月1日から4年間は、仕入税額控除の方式として「区分記載請求書等保存方式」が、2023年10月1日からは「適格請求書等保存方式」(いわゆる「インボイス制度」)が導入されることとなる。
インボイス制度は、事業者の規模や商材に左右されるものではなく、すべての事業者に関係する制度であるため、注意が必要である。
今回は、インボイス制度の基本的な仕組みと、どのような取引書面がインボイスに該当するのかについて解説したい。

仕入税額控除を受けるために

消費税の納付税額は、「課税期間(※1)中の課税売上げ等に係る消費税額」から「課税期間中の課税仕入れ等に係る消費税額」を控除(仕入税額控除)して計算する。仕入税額控除の適用を受けるためには、法律上一定の要件が定められており、現行制度のもとでは、課税仕入れ等の一定の事実を記載した「帳簿」及び「請求書等」を保存する必要がある。
軽減税率制度実施後の区分記載請求書等保存方式のもとでは、現行の仕入税額控除の要件として保存が必要な「帳簿」及び「請求書等」の双方に、一定の記載事項が追加される。さらに、そこから4年後の適格請求書等保存方式のもとでは、「請求書等」についてさらに一定の記載事項が追加されることとなる(図表1参照)。

(※1)課税期間とは、消費税の計算期間を指し、原則として個人事業者は1月1日から12月31日までの1年間、法人は事業年度とされている。

 

区分記載請求書等保存方式の仕組み

■区分記載請求書の記載事項

区分記載請求書等保存方式のもとでは、仕入税額控除の要件として、現行の請求書等保存方式の仕組みを維持しつつ、その仕入れが軽減税率対象となる資産の譲渡等に係るものか否かの区分を明確にするために、「帳簿」及び「請求書等」に一定の記載事項を追加する必要がある。
まず、帳簿については、現行の記載事項に加え、「軽減税率の対象品目である旨」の記載が必要となる。また、請求書等については、現行の記載事項に加え、①「軽減税率の対象品目である旨」と②「税率ごとに区分して合計した対価の額(税込)」の記載が必要となる(図表1参照)。

■記載方法

これらの記載事項の表記については、各事業者の取引の態様に応じて、様々な方法が考えられる。たとえば、軽減税率対象の物品を全く販売しない事業者であれば、請求書等に「軽減税率の対象品目である旨」を記載する必要はないなど、国税庁HPにて公表されているQ&Aにも具体例が示されているため参照されたい(※2)。

(※2)参照 国税庁軽減税率制度特設ページ
http://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/index.htm

■区分記載請求書等保存方式に関する注意点

区分記載請求書等保存方式においては、売り手に対して請求書等の「交付義務」及び「交付した請求書の写しの保存義務」は定められていない。また、免税事業者でも区分記載請求書の発行は可能である。そして、前述の①及び②の記載事項を満たしていない請求書等を受け取った場合には、受け取った側において取引事実に基づいて自ら追記することができる(①②以外の事項について追記することはできない)。
なお、現行の請求書等保存方式と同様、取引額が3万円未満であるときや、請求書等の交付を受けなかったことにつき、やむを得ない理由があるとき(EDIを利用しており書面での請求書を発行していないケースなど)は、帳簿の保存のみで仕入税額控除を受けることができる。

 

適格請求書等保存方式の仕組み

■適格請求書の記載事項

適格請求書等保存方式とは、複数税率下において適正な課税を確保する観点から実施される仕入税額控除の方式であり、原則として一定の記載事項を備えた「帳簿」及び「適格請求書」(いわゆる「インボイス」)の保存が仕入税額控除の要件となる。帳簿については、区分記載請求書等保存方式における記載事項と同じである。適格請求書については、区分記載請求書等の記載事項に加えて、①「登録番号」、②「税率ごとの消費税額」及び③「適用税率」の記載が求められる(図表1参照)。

■適格請求書等保存方式の注意点

適格請求書等保存方式は区分記載請求書と異なり、売り手は、買い手(課税事業者に限られる)の求めがあった場合には適格請求書の「交付義務」及び「交付した請求書の写しの保存義務」が生じることとなる。
また、適格請求書の発行を行うためには、税務署長の登録を受ける必要がある。登録を受けることができるのは課税事業者に限られるから、免税事業者は適格請求書の発行ができないこととなるが、免税事業者であっても、課税事業者となることを選択すれば、登録を受けることができる。課税事業者においても登録を受けることは義務ではないが、登録を受けなければ適格請求書を発行できず、取引の相手方が仕入税額控除を受けられなくなるので注意が必要である。
さらに、取引額が3万円未満であるときや請求書等の交付を受けなかったことにつき、やむを得ない理由があるときに帳簿の保存のみで仕入税額控除を受けることができるという規定は、適格請求書等保存方式のもとでは廃止される。そのため、たとえ少額の取引であっても、原則として適格請求書の保存がなければ仕入税額控除が受けられないこととなる。

 

インボイスにあたる書面

■適格請求書とは

適格請求書(インボイス)とは、「売り手が買い手に対し正確な適用税率や消費税額等を伝えるための手段であり、一定の事項が記載された請求書や納品書その他これらに類する書類」をいう。

インボイスの記載事項として定められている事項は、①適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号、②取引年月日、③取引内容(軽減税率の対象となる場合はその旨)、④税率ごとに合計した税抜又は税込対価の額及び適用税率、⑤消費税額等(端数処理は1請求当たり税率ごとに1回ずつ)、⑥書類の交付を受ける者の氏名又は名称、である。
インボイスの様式は法令等で特に定められておらず、前記の記載事項が記載された書類であればその名称如何は問わず、インボイスに該当する。また、インボイスの記載事項は1つの書類のみで充足する必要はなく、複数の書類全体で記載事項を満たしていれば、これら複数の書類を合わせてインボイスとして扱うことができる。この場合、請求書で納品書番号を引用するなど、複数の書類の相互の関連を明確にしておく必要がある(図表2参照)。

■支払通知書がインボイスにあたる場合

インボイスは、「売り手」から「買い手」に対して交付するものではあるが、「買い手」から「売り手」に対し発行される「支払通知書」においてインボイス記載事項を満たし、「売り手」の確認を受けたものを保管することで仕入税額控除が可能となる(仕入明細書対応)。
この際、注意すべき点としては、インボイス記載事項である「登録番号」とは、「売り手」の登録番号を指すため、「買い手」が発行する「支払通知書」においても、「売り手」の登録番号を記載する必要があるということである(図表3参照)。

(続く)

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