2015年5月号 通販110番 「2014年度 消費者相談件数とその概要」

14年度における、通販110番の消費者相談件数の集計がまとまりました。速報値(※1)として、相談内容の概要を報告します。(文中、前年度は13年度、今年度は14年度を指す。なお、媒体としての「インターネット」は、可能な限りパソコン(PC)によるものと、スマホ、タブレット等の携帯端末(モバイル)によるものに分けて集計している。また、「通販に関する一般的な相談」は集計数に含まれているが、分析の対象としていない)
(※1)後日、数値を修正する場合がある。

※図表はクリックすると拡大されます。

■相談件数
会員、非会員とも大幅に減少傾向

14年度に通販110番に寄せられた「通信販売に関する相談」は、6,419件で、前年度に比べ、29.3%の大幅な減少となった。これは「詐欺的サイト」に関する相談(※2)が大幅に減少していることに併せて、会員・非会員共に通常の相談も減少していることによる。また、「通信販売以外に関する相談」は166件で、8.3%減少した。総件数は6,585件と28.8%の減少となった。(図表1参照)

「通信販売に関する相談」のうち、全国の消費生活センター等公的機関からの相談は11.9%を占め、12.8%減少し、767件だった。(図表2参照)

会員に関する相談数は1,053件で、前年度の増加から29.5%の減少に転じた。なお前々年度との比較においても16.7%の減少となっており、前年度を除き、09年度以来の減少傾向は変わらないものとみられる。相談数のうち、苦情は681件で30.4%の減少、問い合わせも372件で27.8%の減少となった。
なお、会員について、一社あたり10件以上の相談が寄せられた企業は、前年度は31社、合計1,125件だったが今年度は、24社、合計699件で大幅に減少した。減少の主因として、前年度100件を数えた一部の企業が活動を停止したこと、その他の企業については改善努力が結実したものと推測される。今年度100件を超えた企業は皆無である。特に前年度多く寄せられた一部企業の、「無料電話番号」に関する問い合わせは、下半期以降はほとんどみられなくなった。
一方、非会員に関する相談も5,145件で、29.4%の大幅な減少となった。しかし、一社で300件もの相談が寄せられる外資系大手ネット通販企業も含まれており、課題は残されている。なお、減少の主因は、前述の「詐欺的サイト」に関する相談が2,314件と、39.6%減少したことにある。
また、事業者が特定されていない「通販に関する一般的な相談」は221件、23.0%の減少となった。
また、会員・非会員・一般、それぞれの割合は、16.4%・80.2%・3.4%だった。(図表3参照)

(※2)「通販サイトを装って、商品を送らずに代金をだまし取ったり、模倣品、海賊版その他購入しようとした品と全く別の物を送りつけるといった詐欺を行うことを目的とするサイト」に関する相談を指す。

 

■広告媒体別相談件数
インターネット、テレビ、カタログなど、主要媒体は大幅に減少

1位 インターネット/PC(4,150件・対前年比68.1%)
2位 テレビ(379件・対前年比85.9%)
3位 インターネット/モバイル(304件・対前年比108.2%)
4位 カタログ(179件・対前年比70.2%)
5位 新聞(94件・対前年比75.2%)
5位 オークション(94件・対前年比94.0%)

「通信販売に関する相談」のうち媒体の判明したものは5,395件で、主要媒体は上記のとおりとなった。
「インターネット/PC」は大幅に減少したものの、前年と変わらず1位である。減少の原因は「詐欺的サイト」に関する相談が大幅に減少したことにある。
3位の「インターネット/モバイル」は、小幅ながら今年度も引き続き増加した。
また、媒体の判明した相談件数における割合(以下割合)に関し、PCは76.9%と前年度から3.4ポイント減少、モバイルは5.6%で1.9ポイント増加した。「モバイル」は、敢えてモバイルを利用してのインターネット通販であるとまで申告しない相談者が多いように見受けられ、実際の「モバイル」率は、さらに多いものと推定される。
「インターネット」に関する相談のうち、会員に関するものはPCが129件で、56.1%の大幅な減少となった。モバイルは11件のみである。また、媒体の判明した相談件数のうち、会員の割合に関してはPCが18.9%で、11.5ポイント減少した。
一方、非会員はPCが3,990件で、30.6%減少し、モバイルは290件で7.8%の増加となった。割合は、PCが86.8%と1.8ポイント減少、モバイルは6.3%で2.2ポイントの増加となった。
「詐欺的サイト」に関する相談は前年度から約40%減少し、約2,300件となった。このうち、モバイルでの申込と思われる相談は約5%程度とみられる。「インターネット」に関する相談数は、依然として当該「詐欺的サイト」に関する相談の影響を大きく受けている。
なお、「詐欺的サイト」に関する相談を除いたインターネット相談合計値は16.0%減少しており、落ち着きを見せ始めている印象である。
「テレビ」の順位も前年度と変わりなく2位であるが、14.1%の減少の379件だった。割合は相対的に上がり、前年度の5.8%から1.2ポイント増加し、7.0%となった。
会員は15.6%減少し292件、非会員は58件と少ないものの、3.6%の微増となった。ただし、会員の割合が多いことも影響し、年々減少傾向にある。2011年度との比較では32.2%と、大幅に減少している。
主要媒体のうち、前年度大幅に減少した「カタログ」は、さらに、29.8%減少し179件となった。そのうち、会員は35.6%減少の103件、非会員も32.4%減少の50件だった。(図表4参照)

 

 

■相談内容別件数(複数集計)
詐欺的サイトが大きく内容に影響。商品が届かず、電話もつながらず

●苦情内容
1位 未着・延着(1,702件・対前年比57.8%)
2位 電話不通(1,575件・対前年比58.8%) 
3位 返品・交換(860件・対前年比79.3%)
4位 契約・解約(620件・対前年比91.9%)
5位 広告内容(540件・対前年比89.1%)
6位 個人情報(418件・対前年比199.0%)

1位の「(商品の)未着・延着」については、会員は22件、85%の大幅な減少となった。
非会員は1,675件、40%の減少となったものの98.4%を占める結果となった。主因として、支払いをしても商品を送らない詐欺的サイトに関連したものが、1,400件以上寄せられていることがあげられる。
2位の「電話不通(電話がつながらない)」は、会員45件で79.0%減少した。これは前年度一部企業の拡販期における混乱が収束したことによる。
非会員については37.9%減少したものの、依然として1,527件、97.0%を占めている。これも詐欺的サイトに関連したものと推測されるものが約1,160件あった。
3位「返品・交換」については20.7%減少し、860件。前年に続き、減少傾向にある。会員は271件で10.9%減少、非会員も584件で24.1%の減少だった。消費者が、商品の仕様や取引条件を勘違いしたものが目立つが、特に非会員については、自動車やオートバイ、自転車部品が不適合にもかかわらず、返品・交換もできず苦情になるケースが散見される。
4位の「契約・解約」は、会員が74件で、31.5%減少した。複数企業における食品の「頒布会」「定期購入」など、継続的供給契約の解約に関する相談が、20件程度寄せられた。
また非会員は3.4%減少の540件だった。このうち目立つ相談は「詐欺的サイト」に関する相談で約130件寄せられていた。その他、会員と同様「定期購入」などの継続的供給契約の解約に関する相談が約60件寄せられた。
5位の「広告内容」は10.9%減少し、540件となった。そのうち会員は173件で、9.9%減少した。媒体は「テレビ」が多く73件、42.2%を占めた。さらに、複数の要素を含むものとしては「返品・交換」に関連するものが多く、88件寄せられた。非会員は359件で10.9%減少した。インターネット(PC及びモバイル)が305件、約85%以上を占めた。複数の要素としては、会員と同様「返品・交換」に関連するものが131件寄せられた。
6位の個人情報は、前年度の約2倍、418件だった。そのうち会員は48件、45.5%の増加である。内容は「購入履歴を含む個人情報の削除」に関するものが17件あった。非会員は336件で、対前年比210.0%となった。そのうち259件が詐欺的サイトに関連し、申し込み時に入力した個人情報の悪用を心配しての相談だった。(図表5参照)

 

●問い合わせ内容

1位 企業の連絡先(786件・対前年比75.9%)
2位 信頼性・情報(171件・対前年比89.5%)
3位 商品取扱企業(143件・対前年比63.6%)
4位 返品・交換(69件・対前年比64.5%)
4位 広告内容(69件・対前年比77.5%減)
6位 契約・解約 (65件・対前年比62.5%)

1位の「企業の連絡先(を知りたい)」は、会員が268件で、23.0%減少した。このうち、テレビが48件を占め、「注文、電話番号メモを紛失」「テレビで見た商品を注文したいが、ショップ名も電話番号も不明」など、高齢者と思われる消費者からの問い合わせが多かった。なお上半期、主にテレビショッピングを展開する特定企業に関して、他媒体を含め当該相談が30件以上を数えたが、表示方法を改善したところ、皆無になった。またカタログについては28件、テレビと似た理由での問い合わせが多くみられた。
非会員は511件にのぼり、23.5%の減少となった。そのうち、前述の外資系大手ネット通販企業の電話番号を問うものだけで、184件を数えた。原因は、電話番号の表示がわかりにくいことにあるが、前年度に続き改善されていない。
2位の「信頼性・情報」は会員23件、非会員142件だった。そのうち、詐欺的サイトに関しては39件だった。
3位の「商品取扱企業」については、過去に購入した商品を再度注文したいが、会社名等がわからないというケースも散見される。この場合、相談者がうろ覚えの商品名や商品の特徴から類推し、主としてインターネット検索で探すケースがほとんどである。会員の取扱商品とみられたものは35件で、非会員の取扱商品とみられたものが51件だった。
4位「返品・交換」は、会員13件、非会員48件だった。前述「苦情」欄における「返品・交換」と同様、大幅に減少傾向にある。
5位「広告内容」は、会員13件、非会員43件だった。これも、前述「苦情」欄におけるのと同様、大幅に減少傾向にある
6位「契約・解約」は、会員が3件、51件が非会員だった。そのうち、消費生活センター等、行政機関からの問い合わせは会員2件のみに対し、非会員は28件寄せられた。特に後者は、未成年の申し込みや、申込後の取り消し依頼に対し、「返品特約」表示があいまいにも関わらず対応しないなどのケースについて、表示内容や顧客対応の方法について当相談室の見解を求められるものが散見された。(図表6参照)

 

■商品別 苦情・問い合わせ件数
上位の商品は詐欺的サイトが多数、健食では「定期購入」に関する相談も

●1位 バッグ・財布類(589件・対前年比56.3%)
苦情が564件、問い合わせはわずか25件だった。会員の相談計(苦情及び問い合わせ)は25件のみで、判明した媒体の中で多いものは、テレビが12件、カタログが6件、インターネット(PC)が4件だった。非会員は562件、95%以上を占めた。そのうち457件、81.3%が詐欺的サイトでトラブルに遭ったと思われるものだった。内容は288件、63.0%が商品の未着で、そのほとんどが電話番号の表示がない、またあっても電話が通じなかったというものだった。

●2位 靴(511件・対前年比52.4%)
苦情が488件、問い合わせは23件だった。会員の相談計はわずか13件、非会員は498件で97.5%を占めた。このうち、詐欺的サイトに関連したものは392件で、78.7%を占めた。内容は1位のバッグ・財布類と、ほぼ同様である。

●3位 家電品(273件・対前年比100.4%)
苦情は231件、問い合わせは42件だった。会員の相談計は74件で5.1%減だった。会員の割合は27.1%を占め、上位商品の中では比較的高い。判明した媒体の中で多いものは、テレビで51.4%を占めた。なお、35件が「返品」に関連する内容で、「通電後(使用後)返品不可」という条件がわかりにくいという意見が散見された。非会員は192件で5.5%増という結果になった。そのうち、詐欺的サイトに関連するものは96件、半数を占めた。

●4位 婦人衣料品(242件・対前年比66.9%)
苦情は219件、問合わせは23件だった。会員の相談計は37件で、44.8%の減少となった。「色落ちしたのに、返品期間を大幅に超えているとして返品を受けてくれない」「会社は異臭を認めない」など、返品交換に関わる苦情・問い合わせが17件寄せられた。
非会員は203件で29.8%減少したものの、占める割合は多く、83.9%となった。また、返品・交換に関連するものは54件寄せられ、26.6%を占めた。内容は、「下げ札等の付属物が不足している場合は対応できない」「交換はするが返品は受けられない」「廉価であるため品質に責任を持たない」「汚損がありながら返品対応されない」などである。なお、詐欺的サイトに関わるトラブルは、上位2商品カテゴリーに比べ比較的少なく、72件、35.5%を占めた。

●5位 健康食品(222件・対前年比72.5%)
苦情は118件、問い合わせは104件だった。会員の苦情・問い合わせは、それぞれ34件、非会員は苦情82件、問い合わせは63件だった。いずれも大幅に減少している。
判明した媒体の中で多いものは、会員がテレビで21件、非会員はインターネット(PC)55件、テレビは13件だった。
苦情は「定期購入」に関連する相談が目立っている。会員については、一定期間の解約ができない旨を取引条件としている場合であっても、苦情の際には、解約の申し出に柔軟に対応するケースが多いと思われる。しかし、非会員については、同様の取引条件の場合に、「解約をしたいが拒否された」「解約の条件が厳し過ぎる」「解約したいのに電話がつながらない」など、厳格に対処を行うケースが散見される。
問い合わせの内容は、会員・非会員に関わらず、70%前後が取扱企業の連絡先を問うものだった。
なお、前年度、注文した事実がないにも関わらず「注文した商品の発送準備ができた」などと消費者を惑わせ、商品を送りつけようとする商法に関する相談が多く寄せられたが、今年度は1件のみだった。
なお、商品購入や購入後の問い合わせを目的に、「販売会社の連絡先が知りたい」との相談は、会員25件、非会員43件だった。(図表7参照)

 

■通販110番より
詐欺的サイトが収束の方向か?

詐欺的サイトに関連すると思われる相談は2009年度に入り始め、前年度のピーク時には、3,829件を数えたが、今年度は約4割減少し、2,314件となった。減少した理由は、官民マスコミ一体となった消費者への注意喚起、警察や銀行の協力による迅速な口座凍結などの動きが奏功したものとみられる。
商品は、かつては主として著名ブランドのバッグ類、スポーツシューズを中心とした靴、腕時計などだったが、前年~今年度は、既存企業のホームページや販売サイトをコピーした「なりすましサイト」が多く登場し、取扱商品も日常生活用品にまで広がったのが特徴である。その90%以上は、前払いをしたが商品が届かないというものだった。著名ブランドのコピー品を含む別商品が送られてきたケースは2%程度、当相談室からの助言によって未然に防止ができたのは6%前後にすぎない。
1件あたりの騙し取られた最大金額は21万円、最低金額は数百円だった。
なお、現在は消費者に周知を図った結果、収束の方向にあるとは言え、消費者が申し込み時に登録した情報を悪用するなどにより、今後被害が出ることも考えられ、予断を許さない状況である。

消費者相談室「通販110番」室長 八代修一

 

 

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