2015年3月号 特集 「女性顧客の心を掴むには」

 

■研究所の取り組み 3つの柱

2006年時点で、Web調査の内製化と女性の「インサイト」に取り組む

―ベル研ではどのようなことに取り組んでいるのでしょうか。

坂本 大きく分けると3つの柱があります。まず1つ目が、先ほどの話に出た「しあわせ予報」のような自主調査や女性研究。2つ目がコミュニティサイト「ベルメゾンデッセ」の運営。そして3つ目が社内からの依頼調査です。

―「ベルメゾンデッセ」とはどのようなものですか。

坂本 これは元々2006年に立ち上がった「くらしのたまご」というサイトが前身にあります。ベル研ができた2004年当時はちょうどWeb調査というものが徐々に増えてきた時代だったということもあり、弊社でもその仕組みを作ろうと「スタイルモニター制度」というのを立ち上げました。社外モニターも含めて会員化を図り、すべて自前でWeb調査を行う仕組みです。それをベースにしてできたのが「くらしのたまご」です。

―この時期にWeb調査を内製化しているというのはかなり先進的ですね。

坂本 ええ、かなり早いと思います。ただ、それよりも先進的だったのは、この時期に既に今の言葉でいう「インサイト」を探って、モニターのお客様と我々とメーカーさん、そして専門家と一緒になって女性の本音を反映させた商品を作ろうという取り組みを始めたのです。例えば、冷え症に悩む女性から意見を出してもらう「冷えとり会議」みたいなものを催して、そこでシルクの重ね履き靴下や「ハラキャミ」という製品を開発しました。テレビや新聞などでも取り上げていただいて話題になりました。印象的なのは2008年に開発した湯たんぽですね。といっても冬ではなく夏に使うものです。当時はまだ節電などの意識が低くてクーラーの強い職場が多く、クーラー冷えに悩まされていた多くの働く女性たちの声を受けて、お腹周りや子宮を冷やさないような小さめのサイズで柔らかい素材の湯たんぽを開発したのです。これは非常によく売れました。その後に「くらしのたまご」をリニューアルして2010年12月、「ベルメゾンデッセ」に変えました。

―なぜリニューアルしたのですか。

坂本 ベルメゾンとベルメゾンコミュニティサイトのシナジー効果や、オウンドメディアとしてもう少し発信力を高められないかと考えたからです。「くらしのたまご」はクリエイターに入っていただいて、一緒に物を作ろうというコンセプトでした。手作りが好きな方々のコミュニティという感じでしたが、これをもっとベルメゾンとシナジー効果を高めてみようということになったのです。つまり、商品紹介やモニターなども全部ベルメゾンに合わせようというわけです。

和田 「くらしのたまご」というのは、割と小さな世界で活動していたんですよね。今でこそ消費者と直接コミュニケーションをとって本音を聞き出して、一緒に製品を作り上げていく「インサイト」という言葉がマーケティングのキーワードになっていますが、当時はそのはしりだったかと思います。ですから、お客様もまだ慣れていなかったので参加意欲も高かったし、良い意見をたくさん聞けたような気がしますね。逆に今の方が、SNSの普及などで個人がさまざまな場で意見を表明することに慣れてしまったことで、難しくなってきている気がしますね。

経営判断にも影響を与える「デッセ」で吸い上げた顧客の声

―「ベルメゾンデッセ」になってから何が大きく変わりましたか。

和田 まずは会員の増加率ですね。やはり「ベルメゾンデッセ」にしてから顕著な勢いで伸びてきました。その会員の8割がベルメゾンの会員なので、そういう意味ではシナジー効果が生まれていると思います。そして何よりも大きいのは、「カジドル」という女性ユーザーたちが主体となってさまざまなコンセプトを作っていることです。「ベルメゾンデッセ」の会員は現在約14万人いますが、その中で応募していただいた方のうち、選考というとおこがましいですが、好感度が高かったり発信力が高かったりした方たちにお声がけして、いろいろな生活について発信してもらったり、我々の商品をモニターしてもらったりしています。その結果はカタログ誌面に掲載させていただくこともあります。

坂本 「ベルメゾンデッセ」で直接、商品開発はしていませんが、昨年は「カジドル」さんの協力を得て、収納専科と意見交換をしながらキッチン周りの商品を一緒に開発しました。これまで4アイテムが開発されています。

―そのような「カジドル」さんたちの生の声は、他にどのように活用されているのでしょうか。

坂本 最も大きいのは依頼調査ですね。各開発部からさまざまな相談が来るので、「ベルメゾンデッセ」のモニター、「カジドル」さんにアンケートを行ったり、グループインタビューを実施したりして、その結果を基に、商品開発に役立てています。

和田 この依頼調査が、ベル研の3つ目の柱なのです。先ほどお話ししたような千趣会の調査好きのDNAがありますので、わからないことがあるとすぐにベル研に頼んでみようという流れができ上がっていて、多い時は年間130件ぐらいあります。商品の改良・改善点はもちろん、困り事、悩み事、他社の動向なども含めて多種多様な依頼が寄せられます。「ベルメゾンデッセ」の声というのは顧客の声とほぼ一致しますので、開発部はもちろん、経営陣にも報告します。CSI調査のような顧客満足度調査も我々の担当ですし、そういう意味では調査に留まらず、経営判断にも役立っていると言えるかもしれません。

 

 

 

 

 

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