2015年3月号 特集 「女性顧客の心を掴むには」

 

■女性たちの意識はどう変わっていくのか

厳しい経済状況の中で芽生えた「お得」から「量より質」という変化

―先ほどの4つのキーワードを踏まえて今後、女性の意識や生活はどのように変わっていくとお考えでしょうか。

和田 まずはやはり「厳しい」という印象がありますね。昨年は消費税増税がありましたし、物価高も相次いだ。先日の日経の世論調査でも、景気が良くなったと感じていない人が8割もいらっしゃる。我々も独自に「財布の紐」調査というのを半年に1回行っていて、消費に対する考え方や景況感、今の節約度合いなどについて聞いているのですが、昨年10月の調査では、過去3年で最悪の数字が出ました(右図)。実質所得という物価上昇分を省いた所得の減少が18カ月ずっと冷え込んでいます。つまり、増税で物価はどんどん上がっているのに給料が増えないということで、女性の意識や生活も実は相当厳しくなっているのです。今年の1月に実施した生活予想アンケートでも「お得」というところに意識が行っています。価格競争、ポイント還元競争みたいな形になっている通販業界を見ても、これは明らかでしょう。

―かなり暗い先行きになってしまいますね。

和田 ええ、ただその一方で、「量から質へ」みたいなところも確実に芽生えてきています。昨年3月の調査でも41歳の専業主婦が、「食費は質を落とさずやりくりできるといい。健康を考えて良いものをうまく買っていきたい」と回答しています。このようなニーズに応えたのが、セブン-イレブンさんのプレミアムPBであると思うんです。最近は発泡酒よりもやはり「地ビール」のように質の良いビールの方がいい、みたいな風潮もありますし。

―付加価値を付けていくということでしょうか。

和田 そうですね。無印良品さんなどはまさに典型です。あそこは「ずっといい値」と「こだわりたい値」という2つの商品が入っているのですが、まさに先ほど話に出た良質志向をとっている。千趣会もそうですが、これからはいかに付加価値を高めていくかということが重要でしょうね。ファストファッションなども今ちょっと厳しくなっているという情報も聞いたりしますので、そういう意味でいわゆるメリハリ、かけないところはかけないけれど、かけるところはかけるみたいな二極のものを融合して、自分の生活を賢く楽しむ
という流れがあります。実際にテーマパークの売上げは増えていますしね。

働く女性が増えれば増えるほど「家」の果たす役割が重要になる

―他にはどのような予測をされていますか。

和田 これは私見ですが、生活向上心というか今よりも良い暮らしを実現したいという方が3〜4割はいらっしゃると思っています。こういう人たちに対して、いかに「憧れ」や手を伸ばせば届くという世界を提案できるかが大切ではないでしょうか。興味・関心ごとのターゲティングですね。『Mart』という30代をターゲットにした女性誌の2月号は「気分が上がる雑貨で新しい年をスタートしよう」というタイトルでした。実際に100円ショップの中でも今好調な「セリア」には、安くておしゃれなDIYのアイテムがいっぱい置いてある。世の中暗いですけど、そんなにお金をかけなくても気分が上がるようなことをしようという一つの流れもあるのかなと思いました。また、「家」というものの役割が今以上に重要になると思います。働く女性が増えれば、どんなに社会が支援しても、子育てや家事との両立ですからそれなりにストレスが多くなる。その時、癒される場所としての「家」は非常に重要ですから。実際に今年1月の調査でも「ストレスを解消できる居心地の良い家にしたい」だとか、「家事がしやすい家にしたい」という意見が出ているんですよ。今朝の新聞でニトリさんが銀座に旗艦店を出すという記事がありましたが、日本はまだまだホームファッションという考え方が遅れています。近年、ZARAホームが日本進出を果たすなど、インテリアとアパレル・雑貨を融合した新たな生活スタイルを位置付ける流れもできつつありますので、そこは注目だと思っています。

―いろいろなヒントをいただきまして、本日はありがとうございました。

和田・坂本 ありがとうございました。

 

 

 

 

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