2014年6月号 「食品の新たな機能性表示制度」検討会、いよいよヤマ場に

 

昨年6月の閣議決定により、安倍総理が「健康食品の機能性表示を解禁します」と宣言し、生鮮食品、加工食品、健康食品などを含む食品の機能性表示制度創設のための検討会が昨年12月から開催されている。5月30日には第6回の検討会が開催され、対象成分、科学的根拠、機能性表示の範囲など、本制度の根幹を構成する部分について本格的な議論がされた。
しかし、これまで消費者庁の資料で示された制度の案は、既存の特定保健用食品(トクホ)をベースとし、あるいはそれ以上に厳しい制度内容となっている。
まず、機能性表示の在り方について基本的方向性として①既存の栄養機能食品制度とトクホはそのままとし廃止しない、②機能性表示は国ではなく(栄養機能食品は国の基準、トクホは国の許可)企業の責任において行う、③機能性表示の科学的根拠の水準は、消費者の誤認を招かず、消費者の自主的かつ合理的な商品選択に資するものとする、④機能性表示については、ア.最終製品を用いたヒト試験、イ.適切な研究レビューによる実証のいずれかが必須、⑤複数の保健機能成分についてそれぞれ機能性表示をしようとする場合は、成分ごとに機能性表示を実証すればよい、としている。しかし、医薬関係委員からは、⑤について複合成分の機能性を実証できなければ認められないとの意見が出された。
また、対象食品は食品全般だが、ビールなどのアルコール飲料、ナトリウム、糖分などを摂取する食品は対象外。対象成分は直接的間接的に定量可能な成分とした。ただし資料には、対象成分の作用機序、作用動態については、動物を用いたinvivo試験、ヒト試験のいずれかで実証されていることとしており、かなり厳しい条件である。さらに、対象者としては未成年、妊婦、授乳婦は対象外。
可能な機能性表示の範囲については、「健康維持・増進」に関する表現とし、疾病の治療、予防を目的とする表示や疾病リスク低減表示など疾病名を含む表示はできないとした。したがって、トクホで認められた「おなかの調子を整える、骨を丈夫にする、歯を強くする」などの表現はできるが、医薬品と食品の境界線(薬事法の規制)があるため体の部位は表示できない。つまり、「眼の健康に」や「ひざ関節に」などの表現はできないということだ。
以上のように、これまで示された消費者庁の資料、検討会での議論を踏まえると、業界が描いていた制度とはかなり異なるものになってしまうおそれがある。既存のトクホなどの制度は事業者の負担が大きく、中小企業にとっては使いづらいものである。日本の成長戦略の一環として新たな制度を創設し、世界最先端のものとし、海外にも日本の健康食品を広めていこうという安倍総理の宣言からはかなり遠ざかったものになっている。今後の検討会では、業界の意見を集約して委員として参加しているJADMAの宮島理事から積極的に提言していく予定である。ぜひ会員の皆様のご協力を賜りたい。なお、検討会の議事録、資料は消費者庁のホームページをご参照いただきたい。

常務理事・事務局長 万場徹

 

 

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