2014年12月・2015年1月号 「景品表示法の基礎知識と改正景品表示法のポイント」

改正景品表示法が12月1日より施行された。新たに、事業者のコンプライアンス体制の確立、監視指導態勢の強化が盛り込まれている。課徴金導入も控え、通販企業に関わりが深い景品表示法の概要をまとめた。
※図表はクリックすると拡大されます。

 

■景品表示法とは?

不当景品類及び不当表示防止法(昭和三十七年法律第百三十四号)
元々独占禁止法の特例法として制定、平成21年に消費者庁に移管され、消費者の保護が前面に出た。商品及び役務の取引に関連する不当な景品類及び表示による顧客の誘因を防止するため、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれのある行為の制限及び禁止について定めることにより、一般消費者の利益を保護することを目的とする【図1】。

 

 

■景品規制の概要―過大景品類の提供になっていないか?

過大景品に惑わされて質の良くないものや割高なものを買わされてしまうことは、消費者にとって不利益となり、また、過大景品による競争がエスカレートすると、事業者は商品・サービスそのものでの競争に力を入れなくなり、消費者の不利益につながる。このため、過大景品による不健全な競争を防止している。

1 景品類の定義

景品表示法上の「景品類」とは、(1)顧客を誘引するための手段として、(2)事業者が自己の供給する商品・サービスの取引に付随して提供する(3)物品、金銭その他の経済上の利益を指す【図2】。

2 一般懸賞

商品・サービスの利用者に対し、くじ等の偶発性、特定行為の優劣性等によって景品類を提供することを「懸賞」と言い、共同懸賞以外のものは「一般懸賞」と呼ばれる【図3】。

3 総付景品

「懸賞」によらずに提供される景品類は、一般に「総付(そうづけ)景品」、「ベタ付け景品」等と呼ばれており、具体的には、商品・サービスの利用者や来店者に対してもれなく提供する金品等がこれにあたる。商品・サービスの購入の申し込み順又は来店の先着順により提供される金品等も総付景品に該当する【図4】。ただし通販の場合、先着順であっても順位がわからないため「その他偶然性」となり一般懸賞扱いとして運用されている。

4 オープン懸賞(参考)
取引付随性のないオープン懸賞の最高額は従来1000万円までとされていたが、平成18年4月に撤廃され、現在では最高額の定めはない。

 

 

■表示規制の概要―不当表示になっていないか?

1 優良誤認(第4条第1項第1号)
実際のものよりも著しく優良であると示し、又は事実に相違して当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも著しく優良であると示す表示。

2 不実証広告規制(第4条第2項)
効能性能等について客観的合理的根拠となる資料の提出を求め、提出されない、又は提出されても客観的合理的根拠と認められない場合は優良誤認とみなす。提出資料は、次の2つの要件を満たすものであること。
1. 提出資料が客観的に実証された内容のものであること。
2. 表示された効果(※1)、性能と提出資料によって実証された内容が適切に対応していること。
(注釈)
※1 例えば、広い室内で使用する商品について、狭い空間での実験データしかない場合は客観的合理的根拠とは認められない。

3 有利誤認(第4条第1項第2号)
実際のもの又は当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示。

4 その他の誤認(第4条第1項第3号)
優良誤認及び有利誤認以外の内閣総理大臣が指定する誤認。特に「商品の原産国に関する不当な表示」、「無果汁飲料」及び「おとり広告に関する表示」 に要注意。

[商品の原産国に関する不当な表示]
一般消費者が原産国を判別することが困難であると認められるもの。商品の内容について実質的な変更をもたらす行為が行われた国が原産国となる。

[無果汁の清涼飲料水等についての表示]
果汁又は果肉が使用されていない清涼飲料水、乳飲料、はっ酵乳、乳酸菌飲料、粉末飲料、アイスクリーム類又は氷菓について、果実の名称を用いた商品名等、果実の絵、写真又は図案、果汁、果皮又は果肉と同一又は類似の色、香り又は味に着色、着香又は味付けがされている表示であって、果汁若しくは果肉が使用されていない旨又は当該清涼飲料水等に使用されている果汁若しくは果肉の割合が明りょうに記載されていない場合、14ポイント以上で「無果汁」、「果汁を含まず」、「果汁ゼロ」、「果汁0%」等と表記すること。

[おとり広告に関する表示]
取引を行うために準備がなされていない場合や、その他実際には取引に応じることができない場合。供給量が著しく限定されているにもかかわらず、その限定の内容が明りょうに記載されていない場合。供給期間、供給の相手方又は顧客一人当たりの供給量が限定されているにもかかわらず、その限定の内容が明りょうに記載されていない場合。合理的理由がないのに取引の成立を妨げる行為が行われたり、その他実際には取引する意志がない場合。

5 各種ガイドライン等

[二重価格表示の判断基準]
・ メーカー希望小売価格は広く一般消費者に周知され、かつ、実際の取引に用いられているか。
・ 通常販売価格はセール前8週間のうち最近相当期間(原則過半以上)の販売実績があるか。
・販売期間が短い季節商品等の場合、最近相当期間が2週間以上あるか【図5】。
※通販の場合「市価」を比較対象価格に用いることは不可能に近い。

[見にくい表示]
①望ましい表示
強調表示を行う際の原則は、打消し表示を行わずに済むように訴求対象を明確にする。
強調表示と打消し表示とを合わせた表示物全体として、その内容又は取引条件が一般消費者に正確に理解されること。例外条件、制約条件がないか充分検討、打消し表示を行わずに済むように強調表示を工夫すること。やむを得ず打消し表示をする場合は、強調表示に近接した場所、他の文字とのバランス、最低でも8ポイント以上の文字、充分な文字間と行間、背景の色との対照性に気を付ける。
②打消し表示について
商品・サービスの内容や取引条件について強調表示を行う一方で、重要な考慮要素となることについて打消し表示を明りょうに行わないことにより、一般消費者に、実際のもの又は競争事業者に係るものよりも著しく優良又は有利なものであると誤認される場合には、景品表示法に違反となる。

[№1表示について]
①№1表示についての景品表示法上の考え方
優良性や有利性を表す№1表示が合理的な根拠に基づかず、事実と異なる場合には、景品表示法上問題となる。
②望ましい表示
(1)商品等の範囲に関する表示
№1表示の対象となる商品等の範囲を明りょうに表示する。
(2)地理的範囲に関する表示
調査対象となった地域を、都道府県、市町村等の行政区画に基づいて明りょうに表示する。
(3)調査期間・時点に関する表示
直近の調査結果に基づいて表示するとともに、№1表示の根拠となる調査の対象となっ
た期間・時点を明りょうに表示する。
(4)№1表示の根拠となる調査の出典を具体的かつ明りょうに表示する。

[その他見ておきたいガイドライン等]
インターネット上の広告表示
「消費者向け電子商取引における表示についての景品表示法上の問題点と留意事項」のポイント
問題となるインターネット上の広告表示の具体例
インターネット消費者取引に係る広告表示に関する景品表示法上の問題点及び留意事項
比較広告についてのガイドライン
⑥公正競争規約
公正競争規約数は平成25年12月1日現在104件(表示規約67件、景品規約37件)。
公正競争規約は業界における正常な商慣習であり、員外社の表示でも規約に照らし措置命令が行われることもある。

 

 

NEW
■景品表示法の改正について(平成26年12月1日から施行)

景品表示法の執行体制【図6】
・ 都道府県に措置命令権と4条2項(不実証広告規制)の調査権
・ 事業所管大臣に期間を決めて調査権を委任
景品表示法違反事件の処理手続き【図7】
・ 事業所管大臣の調査権及び都道府県による措置命令
管理体制整備の義務付け(第7条、第8条、第8条の二)
・ 事業者は法令順守のための管理体制整備を義務付けられる(※2)
・ 事業者の管理体制について、行政は指導・助言を行うことができ、措置を講じていなければ勧告、勧告に従わなければ事業者名を公表できる(※3)。
(注釈)
※2 具体例はこちらを参照。
※3 内閣府消費者委員会では、中小企業に配慮せず、大企業と同じ扱いをすべきとの声が出ている。

 

NEW
■課徴金制度導入について ̶「やり得をなくす」、「不当表示の抑止力」

平成26年秋の臨時国会において成立し、同年11月27日に公布された。公布後1年6カ月以内に施行される。
・ 優良誤認、有利誤認、不実証広告規制違反が対象、指定告示違反は除く
・ 相当な注意を怠ったものではないと認められた場合は免除
・ 課徴金対象期間における対象商品の売上げの3%、但し150万円未満は免除
・ 対象期間は3年を上限
・ 自主申告した場合、課徴金額の2分の1を減額
・ 除斥期間5年(違反行為をやめた日から5年を経過した時は賦課しない)
・ 自主的返金をした場合は課徴金免除又は減額する
・ 自主返金に当たっては、実施予定返金計画書を作成・認定を受けてから返金する

 

 

■表示管理体制の構築について

大樹法律事務所
弁護士 高橋 善樹氏

◎不当表示は無過失責任だが課徴金には過失が必要

12月1日から施行された改正景品表示法では、「表示等管理担当者」を定めて表示をチェックすることが求められている。11月14日付で消費者庁から指針が公表されているが、具体的にどのような組織を作れば良いだろうか。
今回義務を課せられたのは、消費者向けの表示をしている企業、個人事業主の全てとなる。不当表示は無過失責任であり、広告の主体が第一義的に責任を負うので、間違った原因が業者にあったとしても最終的には通販企業が責任を負うことになる。今回、これに課徴金がかかるということは、限定する要件が無ければ最大3年間の売上について3%の課徴金がかかる。不当表示は無過失責任だが課徴金は過失が必要ということになる。これから予測されるのは、通販事業者が商品を選択する上で、ある商品の広告で日本一、何倍という表現があれば、単に伝票を見るだけではなく、納入業者に対して根拠を示してもらうよう取引の中で求めていく必要がある。そのようなことをして初めてやるべきことを尽くしたという評価を得られる可能性がある。取引は力関係があるので、根拠を出して欲しいと言っても生のデータを出してくれないかもしれないが、消費者にインパクトを与えるような強い訴求をしているメーカー等に対しては、根拠を出してもらうよう通販事業者が誘導していく。運用としては出来る範囲でやったということが過失なしと評価されることにつながる。
法律には書かれていないが、指針の方で初めて「表示等管理担当者」という言葉が出てきて、その人に事前に表示をチェックさせようとしている。社内で部署を立ち上げて、兼任でも良いので責任者を置いて、表示をチェックする人たちを組織としてきちんと認証するという手続きを経営陣に理解していただき決めていただきたい。

◎メーカーとそれ以外では異なる表示チェックの組織作り

不当表示の発見については大きく2つある。いわゆるメーカーで、自社で製品を作り、広告の根拠を用意でき、商品情報を入手・検証できる立場。流通業者の場合は根拠がわかるようなものを別途用意してもらうように求めていく必要がある。
表示等管理担当者のチームは、不当表示のおそれがあるかどうかを流通ならば取引先に求めてチェックして、メーカーならば商品企画と開発と製造に確認する。その後、表示等管理担当者と、社長、役員の確認を入れることが大事である。不当表示だと判断し、役員も同意した場合、消費者と行政庁と世間への発信が必要になる。通販企業は購入者を把握しているので、対象者に連絡すればよいということになる。目標としては、表示等管理担当者の組織をきちんと運用することによって、広告が出る前に未然に防止することが一番、次はできるだけ早く発見して対応すること。不当表示の情報があった時にいきなり役員を集めるのではなく、十分検討してから役員のところにあげるといった組織図を危機管理として作っておく【図8】。表示等管理担当者の組織としては、社長の下にコンプライアンスの一部門を作ったり、別に表示等管理担当者を置いて、メーカーの場合は商品企画や開発と連動するようにする。メーカーでなければ、管理部門が表示等管理担当者として組織の名簿を管理し、異動が出た場合は研修をし、証拠を残した方が良い。消費者庁から調査が入り表示管理体制を問われたときに書類を提示できるようにしておく必要がある。例えば、いつ誰が勉強会に参加し、資料はこれといった情報を蓄積し管理をしていった方が良い。
一般的なメーカーで支店や営業所で広告を制作している場合、本社を通らないと目が行き届かない。自社の広告がどのような流れで出ているのかを確認しておく。媒体ごとに行っている場合は、各部署に表示等管理担当者の体制を置かなければならない。措置命令を受け公取から指導を受けた際に、各支店ごとに何種類も広告が出てくる場合、本社のチェックを経ているか、変更がある場合は各支店ごとに承認を得ているか、などといったところまで踏み込んだ案件がいくつかある。不当表示とは、そういったことを意識できる人が見ているか見ていないかが大事。メーカーの人は自社の商品や訴求ポイントがわかっているので、自分でチェックするのが比較的容易。流通をどうするかが課題となる。

◎表示チェックの進め方

総合通販のような膨大な数の広告のチェックをどうすれば良いだろうか。広範囲なもの、消費者により大きな影響を与えるもの、強調が強くて消費者にインパクトがある訴求をしているものが対象になりやすい。新商品や新しいサービスは必ずチェックしてから出す。今ある中で優先順位を付けてチェックし、また新商品を入れる時にチェックし、全件事前チェックの体制を整える。今出ているものについては一年の間にチェックをして欲しい。

◎まとめ

商品やサービスの訴求ポイントについて、実際の事実と一致していない場合は不当表示となる。不実証広告規制ができて、15日以内に根拠を出すようになったため、あらかじめ根拠を用意してから表示する必要がある。消費者庁が不当表示疑いの情報を入手したら、広告物は世に出回っているので簡単に入手できる。事実かどうかの確認は広告制作者から根拠を聞いて、調書を取る。商品を作っている人はどこに特徴があるのか、訴求ポイントがわかる。流通で仕入れて売っている場合は商品のことが全部わかっているわけではないので難しい。自分が消費者になってみて、広告のどこを見て買うのかを考えるとだいたい推測できる。複数ある場合はそれぞれが客観的な事実かどうかを確認する。
不当表示は色んなバリエーションがある。メーカー、流通、それぞれの立場で消費者から見てこれが本当にあるかどうかをメーカーに問い正す。一番訴求するところから優先順位を付けて見ていく。

 

 

 

 

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