2014年5月号 広告適正化委員会 「通信販売取引改善のための通販広告実態調査」

JADMAは、広告表現の実態を明らかにし、通信販売におけるトラブルの是正対応策や広告表現の適正化を推進するため、昨年度に引き続き新聞折込チラシの調査・検証を行った。第2回の調査結果を抜粋、編集の上報告する。なお、報告書全文はこちら(PDF)
※図表はクリックすると拡大されます。

■調査概要
第1回目は2013年9月1日(日)から10月16日(水)まで、第2回目は2013年11月1日(金)から12月7日(土)にそれぞれ折り込まれたチラシを対象に実施した。実施エリアは札幌、仙台、東京、名古屋、大阪、福岡の6都市を選択し、各都市の発行部数トップ紙の朝刊に折り込まれたチラシ計600件を収集した。

■調査結果サマリー
調査結果の合計600件中、第1回300件と第2回300件では通販広告の重複も多く、エリア分析なども割合としては大きな違いはなかった。但し、年末調査の第2回目では前回同様に、クリスマス商戦の告知や食品において季節商品であるおせち料理やカニなどの年末食材の通販が目立った。

(1)エリア
各折込エリア毎の折込件数は、大阪が全体の30.5%と一番多く、次いで、名古屋が20.2%、東京が15.3%と続いた。大阪は毎週水曜日に折り込まれるタブロイド紙に掲載された通販広告の数が影響し、件数では前回より減ったものの183件で他を圧倒していた。

(2)商品分類
商品分類では、「健康食品、食品類」が全体の44%を占めた。次に「化粧品など」が24.7%、「家電家具などのホームリビング用品」が19.0%となっている。「その他」は土嚢、灯油、漢方薬、住宅メンテナンス、清掃サービスなどの通販である。

■商品内容に関する調査結果
商品内容に関する広告表示の適否は、600件中414件、約70%の通販広告が適正に表示されており、前回と比べると約10%の改善となる。しかし、約30%の通販広告については「表示に関する各種法令やガイドライン等」に抵触する怖れがあったり、または消費者視点から信頼性に欠けるものとして改善が必要と判断した。

(1)商品分類別
商品分類別の商品内容に関する広告表示について、「家電など」の「適している」割合が昨年76.8%、今年は85.1%と若干改善している。「健康食品、食品類」も同様に、昨年58.2%、今年70.5%と改善している。主に健康食品で過度に効能効果を標榜した広告表示が目立った。「化粧品など」は化粧品のガイドラインを逸脱した表示があった。

(2)通販会社の業態別
通販会社の業態別の商品内容に関する広告表示の適否については、「適している」割合は高い順に小売、中間流通、メーカーとなっている。消費者により近い業態は通販広告制作の機会が多いのではないかと推察される。

■新聞折込チラシの広告事例
今回の調査では600件の折込チラシを精査した。そして個別に3つのジャンル≪①取引条件、商品説明ともに適正に表示されている広告 ②法令に抵触していないが一部不適正な箇所があり、消費者の信頼を得るためにも改善が必要と思われる広告 ③法令に抵触する怖れのある広告≫で判定を行い、仕分け作業を行った。
ここで紹介する不適正な広告事例については、イエローカード、レッドカードのサインで2つのタイプを明らかにすることとした。

イエローカード
一部不適正な表示が見られ、改善が必要な広告
●特商法の記載事項や返品特約の一部記載漏れが散見される広告。
●商品の説明について、景表法や薬事法等の関連法令に抵触はしていないものの疑念を生じさせる広告。また合理的・客観的に説明がなされるかが疑問視される広告。
●消費者の視点に立った場合に、誤認を招きかねない表示が一部みられる広告。

レッドカード
通販に関連する法令に抵触する怖れのある広告
●特商法の記載事項や返品特約が不記載であり、意図的とも取れる広告。
●商品の説明について、景表法や薬事法等の関連法令に抵触する怖れのある表示が散見する広告。
●意図的に消費者の誤認を誘発しようとするような表示が散見する広告。

 

事例①

「本当の価格ですか?」割引に疑念を感じる広告表示

希望小売価格13万8,000円が特別価格1万円!
メラルベゼル部分に天然宝石(エメラルドorルビーorサファイヤ)を4石、さらに天然シェルの文字盤に天然ダイヤ2個をあしらったグレード感あふれる輝きがあなたの手元を華麗に演出してくれます。
今回輸入元希望小売価格13万8000円のところ92%オフの特別価格1万円(税込)で各限定50本を販売。プレゼントや自分へのご褒美に。宝石鑑定書・保証書付。クオーツは精巧な日本製、製造は中国。ご注文の際、タイプ(エメラルド・ルビー・サファイヤと男性・女性)をご指定下さい。

JADMAの視点
●今回の調査では、価格について疑念を抱かせるような広告が散見された。いわゆる「二重価格」「値引き」の表示で、“比較対照価格”が疑わしい広告表示である。
●上記の事例は、9 2%の大幅値引きを売りとしているが、138,000円で実際に販売されているかが疑問視される。

事例②

「通常価格」はいくらですか? 「定価」はNO!
A
3足目以降は19,800円
2足まで2,980円

B
消費税が無記載

C
本やCDの価格は「定価」
でも一般商品は「定価」は使ってはダメ

今回、読者お試しキャンペーン特別価格にて●●クリーム(14グラム・約1ヶ月分)定価6000円をなんと2980円(50%OFF)に。税込・送料無料。さらに今なら購入者全員に●●マスクをプレゼント。

JADMAの視点
●Aの事例は、二重価格の変形であり、2足までは単価2,980円であるが、その後は19,800円としている。即ちこの商品の通常価格は19,800円ということである。ということは3足買うと合計25,760円ということになる。しかし、このような買い方をすることは決してありえない。
●Bの事例は、税込価格か、税抜価格かが判明しない価格の表示である。
●Cの事例は、「定価」の表示である。公正取引委員会は「定価」については一般商品に使用することはできないとしている。なかなか周知徹底されていない現状であるが、JADMAとして広く周知を図っていきたい。

事例③

ダイエット 合理的根拠のない痩身効果を訴求する広告表示

TVCMで大好評
3週間でストン! メタ◯◯◯ダイエット

Q1 いつ飲むのが良いですか
A.多くの方が、朝食前にお飲みになっています。1日4~6粒を飲んでいる方は毎食前にお飲みになっているようです。欠かさずに毎日飲むことが成功の秘訣です。
Q2 食事制限はいらないの?
A.無理な食事制限は続かないばかりか、体や精神的に負担をかけてスムーズな減量を妨げます。無理な食事制限不要のメタ○○○ダイエットを毎日続けることで、ダイエットを成功させましょう。
Q3 本当に3週間でダイエットできるの?
A.モニターさんの結果では、3週間で皆さんダイエットして、大幅なサイズ減が見られました。ぜひ、次はあなた様も実感してみてください。

JADMAの視点
●上記の事例は、飲むだけで痩せる効果が表れるというサプリメントの広告表示である。画像は使用前・使用後の上半身の比較を行い、さも効果があるように表示されている。また使用方法の“Q & A”も「3週間続けると効果が出る」と表示している。原材料は「ハス葉」「カキ葉」「ビワ葉」のようだが、商品の説明は合理的な根拠とは思われない。
●全体の画像イメージにより、誤認を誘発する不適正な広告表示であり、改善が求められる。

事例④

『医薬品の広告なのかしら?』と思ってしまう広告表示

杏仁オイルの驚きのパワー
角質粒ポツポツがポロリ!?
ボツボツが取れてから肌の質もかわりました。
私の場合、首にはゴマ粒大のツブツブが、両目の下には脂肪の塊のようなものが多数できていて、かなり目立つ状態でした。それが○○○オイルとローションでマッサージしているうちに、ボロボロと取れていったんです。しかも取れた跡も残らずきれいになりました。ブツブツの箇所だけでなく、顔全体に使っていたのですが、硬くしぼんでいた肌が驚くほどふっくらと柔らかくなりました。

JADMAの視点
●ここでは「医薬品」と消費者が誤認しかねないチラシ広告を取り上げた。
●上の事例は、杏仁には皮膚を柔らかくするということから、それを使用した「化粧オイル」で“角質粒が治った”との個人体験談を特集、また図表によって効能効果を具体的に説明している。これだけを見れば、まさしく「医薬品」と誤認しかねない不適正な広告表示である。

■今回の調査結果の特徴
①家電量販店の折込チラシが改善
前回の調査では、家電量販店のチラシ広告は店舗集客を目的としており、副次的に電話でも販売できる商品を掲載しているケースがほとんどであったため、特商法の記載事項なども不完全だった。しかし今回は通販の記載事項を見やすく記載、適正な表示となっている。
②「おせち」の予約受注広告が増加季節商材の「おせち」の予約受注広告が前回の1.5倍の31件あった。また、「おせち特集」として新聞社が特集しているケースも目に付いた。そのうち、適正に表示されている広告もあれば電話番号と価格のみの広告もあり、ばらつきが見られる。
③稚拙な広告が散見
通信販売の初心者ではないかと思われるほど稚拙な広告が散見された。特商法記載事項はもちろん、一体どんな商品なのかわからないという広告も見られた。
④副次的な通販広告の散見
店舗集客を主目的としており、副次的に電話注文も受ける広告もまだ散見される。店頭購入商品は返品可でも、通販購入の場合は返品不可になっているケースもあった。

 

 

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