2015年6月号 広告適正化委員会 「通信販売取引改善のための通販広告実態調査」

JADMAでは、チラシにおける通販広告について、法令を順守しているかなどの情報収集をするとともに、広告表現を明らかにし、通信販売におけるトラブルの是正対応策や広告表現の適正化を推進していくため、2014年度も新聞折込チラシの通信販売広告を対象に調査・検証を行った。なお、報告書全文はこちら(PDF)
※図表はクリックすると拡大されます。

■調査概要

第1回調査は2014年9月1日~10月11日、第2回調査は11月1日~12月25日に折り込まれたチラシを対象に調査した。各300種、合計600種のチラシを精査分析することとした。調査対象の広告チラシは、折込日や折込エリアが違っても同一表現のチラシは1件とし、広告表示が異なる個別折込チラシが各300種となるまで収集を行った。したがって、収集件数は第1回調査465件、第2回調査523件の合計988件となった。
対象エリアは主要都市である札幌、仙台、東京、名古屋、大阪、福岡の6都市とし、対象チラシは各都市の発行部数トップ紙の朝刊に折り込まれたものを収集した。

■調査結果サマリー

調査結果の合計600件中、第1回300件と第2回300件では通販広告の重複も多く、エリア分析なども割合としては大きな違いはなかった。但し、年末調査の第2回目では前回同様に、クリスマス商戦の告知や食品において季節商品であるおせち料理やカニなどの年末食材の通販が目立った。対象件数の各300種、合計600種を収集するため、第1回調査465件と第2回調査523件の合計988件の折込チラシ収集となった。これは、家電量販や食品の通販会社が重複して折込チラシを全国的に転嫁していることに起因している。前回多く見られた新規の通販会社による折込チラシは減少していた。

(1)折込エリア
折込エリアについては、1.福岡、2.札幌、3.仙台、4.名古屋、5.大阪、6.東京の順となった。前回は大阪が毎週水曜日に折り込まれるタブロイド紙に掲載された通販広告の数により一番多かったが、今回は6エリアとも平均化している。これは全国的に顧客を獲得しようとする表れと思われる。

(2)折込曜日
折込曜日については、火曜日が全体の20.9%と一番多く、次いで、土曜日20.4%、水曜日の16.8%と続き、前回の水曜日に代わって火曜日の比率が高くなった。週末に総数増加の傾向が見られるのは、来店を促進する家電量販店の広告が増えており、集客に加え本格的に通販対応をしていることに起因すると思われる。いずれにしても、全体的には折込曜日の分散化が目立った。

(3)商品分類
商品分類については、「健康食品」の折込チラシが全体の25.4%、251件を占めた。次に「家電量販」が17.1%、「食品類」が16.0%となっている。さらに、今回特筆すべき点は前々回、前回と多くのチラシ広告を折込んでいた「化粧品」が、構成比において前回と比較し8.6ポイント減であった。

■商品内容に関する調査結果
商品内容に関する広告表示の適否は、600件中474件、約79.0%の通販広告が適正に表示されており、前回と比べると10.0%の改善となる。しかし、約21.0%のチラシ広告については「表示に関する各種法令」や「ガイドライン」などに抵触するおそれがあったり、または消費者に不信感を与えかねない表示がある。

(1)エリア別
それぞれのエリアごとに商品内容に関する広告表示の適否についてみると、福岡の「適していない」割合が29.1%と一番多い。次いで、名古屋の22.4%となった。
前回、「適していない」割合が一番多いのは名古屋、僅差で仙台の順だったが、全体的に10ポイント改善していることを差し引いても、改善傾向と言える。福岡は、「適していない」割合が昨年とほぼ変わらなかった。

(2)業態別
通販会社の業態別の商品内容に関する広告表示の適否について、小売の「適していない」割合が前回は16.2%だったのに対し、今回は7.0%と大幅に改善している。これは、前回多く見られた新規の通販会社による折込チラシが減少していることに加え、折込数が多い、ある大手小売店の広告表示が改善していることも影響している。

■新聞折込チラシの広告事例
今回の調査では600件の折込チラシを精査した。そのチラシ広告を事務局で予め、次のジャンル≪①取引条件、商品説明とともに適正に表示されている広告 ②法令に抵触していないが一部不適切な箇所があり、消費者の信頼を得るためにも改善が必要と思われる広告 ③法令に抵触するおそれのある広告≫で仕分け、審議するチラシ広告を抽出した。
その上で、委員会では抽出したチラシ広告を中心に、それぞれ審議を行い、問題となる表示箇所の検証や全体的なチラシ広告表示の適否を判定した。

イエローカード
一部不適切な表示が見られ、改善が必要な広告
●特定商取引法の記載事項や返品特約の一部記載漏れが散見される広告。
●商品の説明について、通販関連法令等に抵触はしていないものの疑念を生じさせる広告。また合理的・客観的に説明がなされるかが疑問視される広告。
●消費者の視点に立った場合に、誤認を招きかねない表示が一部みられる広告。

レッドカード
通販に関連する法令に抵触するおそれのある広告
●特定商取引法の記載事項や返品特約が不記載であり、意図的とも思われる広告。
●商品の説明について、通販関連法令に抵触するおそれのある表示が散見する広告。
●意図的に消費者の誤認を誘発しようとするような表示が散見する広告。

 

事例① 社名・所在地がわからない

●「ミシンの限定販売」広告である。基本的な情報はコンパクトに記載しており、適正ではある。しかし、屋号は記載されているものの正式社名は未記載であり、記載することが望ましい。また、この広告だけではミシンの機能・性能を知ることはできず、消費者が安心して購入するに足る情報が不足しているといえる。

●様々な広告を掲載したタブロイド紙の通販広告で特定商取引法に関係する表示が一部欠落しているケースが散見された。
事例② 2台目まではこんなに安くていいの?

●オイルヒーターの二重価格表示であり、2台目までは単価6,980円であるが、その後は29,800円としている。即ちこの商品の通常価格は29,800円ということである。したがって3台買う時は合計43,760円ということになる。しかしこのような買い方をすることは決してありえず、実質通常価格は存在しないのではないかとの疑念が生じかねない。

●また買上げ顧客にもれなく高級毛布をプレゼントと表示している。プレゼントの毛布の価格は5,980円であるとの表示がされており、関連法令等に抵触するおそれがある。

事例③ えっ!部分痩せってできるの?

●「黒酢とどくだみ」の発酵サプリを食することで痩せられると表示し、この商品を使用することのみで「簡単に痩せられる」とイメージ訴求している。

●ダイエットの広告表示は、誇張された「個人体験談」を中心に効能・効果を訴求する構成となっているのが特徴的である。
事例④ 化粧品ですか、医薬品ですか?

●「シミ専用クリーム」の広告である。化粧品の広告表示においては、医療関係者が登場して商品を推奨することは避けなければならない。ここでは美容皮膚科医が登場し「安全・安心」であることを訴求している。また、コピーには「シミが薄くなった」と医師と絡めて効能・効果を表示している。関連法令等に抵触しているおそれがある。

事例⑤ 自社の優良を訴求するNo.1表示

●通販広告には、自社の商品の販売数量や販売順位を表示するケースが多々ある。しかしながらその裏付けが疑問であるものが散見される。そこで、今回の調査で使用されている「No.1」表示を集めてみた。

●左記の事例では、期間が不明であったり、その日だけの1位や、どの商品ジャンルの1位なのかもわからないものまである。さらに自社内だけでカウントした数値データも多数散見される。

●数値データについては消費者が信頼できるように、その裏付けの説明を丁寧にすることが必要である。

■調査結果のまとめ

●取引内容に関する広告表示の調査結果は、前回と大きな差異はなく、記載漏れは「後払い時の支払時期」「商品引渡時期」といった事項が多かった。また、「返品」に関する事項について記載されていないチラシ広告も依然多い状況であった。

●商品内容に関する広告表示の調査結果は、改善が見られた数値結果であった。前回は600件の内容のうち約70.0%のチラシ広告は適正であり、約30.0%のチラシ広告については何らかの改善が必要な箇所があるとの結果であった。今回は80.0%のチラシ広告は適正であり、改善が必要とされるチラシ広告は減少した。

●前回の調査で「医薬品」の販売広告が登場したが、今回はその数が増加していた。薬の効果表示は問題ないものの、「定期購入」「まとめ購入」また「初回限定価格」といった健康食品の広告同様の訴求方法、及び画像や図表などに誇張的な表示が見受けられ問題があった。今後の医薬品広告の方法につき、さらなる検証が必要であるとの認識であった。

●今回のチラシ広告調査にあたっても、チラシに加え、通販会社のホームページや通販サイトの内容も比較検討して、確認作業を行った。前回同様、チラシで表示している価格や販売数量などがホームページの表示内容と食い違っていたものがあり、どちらに信憑性があるか判明できないものが一部見受けられた。一方、通販サイトについては各社ともかなり抑えた表示となっているにも関わらず、チラシ広告について表示に誇張が見られ、全く別物となっているケースが相変わらずあった。

 

 

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