2014年11月号 事業者相談 顧客対応編 「電話を利用した適切な販売方法」

会員社・非会員社を問わず、「いわゆる健康食品」などの販売強化に力を入れる事業者が増えています。その際に、顧客へのアプローチ手段として、昨今では電話機を利用する方法(アウトバウンド)が積極的に行われています。
しかし、通信販売の利用客に対してのアウトバウンドは、メリットも多いのですが、顧客によっては嫌がるケースもみられ、また法的な規制を受けるケースもあります。
今回は、通信販売の延長線上で行う電話機を利用した適切な販売方法について、考えてみたいと思います。

 

■相談事例①

過去に通信販売で購入実績のある顧客に対し、コールセンターから電話で営業活動を行っても良いか?(会員社)

■相談事例②

コールセンターの外部委託業者からアウトバウンドによる販売促進を提案されている。その際、クーリングオフを適用すると聞いたが、そのほかに注意事項はあるか?(会員社)

■相談事例③

当社は通信販売で過去に食品を購入した顧客に対して、アウトバウンドで同一商品もしくは類似商品の追加購入をお勧めしている。なお食品なので返品はできないものとしている。
当社の顧客から相談を受けた消費生活センターから、アウトバウンドで販売した梅干について、クーリングオフが効くはずだと言われた。ついては特別に返品を受けることとしたので、解決したと考えていた。
ところが、次に契約書を見せてくれと言われたが、そのようなものはない。そこで、配送伝票の控えではいけないのか?と訊いたら、今回はそれでも良いと言われた。どのような意味があるのだろうか。(会員社)

■相談事例④

ある期間、すべての出荷に化粧品の無料サンプルを同梱する、または出荷同梱チラシやDMに、「希望者の方に無料サンプルプレゼント」をうたい、希望客にサンプルを送付する。当該顧客には、後日電話をかけ営業する方法が社内で検討されている。通信販売の担当者として違和感を覚えているが、通信販売のバリエーションと考えて良いのだろうか?(会員社)

■相談事例⑤

いわゆる「健康食品」を販売するにあたり利用客を増やすため、通常の販売価格より安い「お試し価格」での販売を行うこととした。その申し込みを受ける電話の中で、同商品の「定期購入」を勧めても良いか?(会員社)

 

■助言

「継続的取引関係」にある顧客とそうでない顧客との明確な線引きが必要

全ての事例に共通しているのは、事業者が通信販売の延長線上で行おうとしている営業方法が、特定商取引法の規制上「通信販売」なのか、「電話勧誘販売」なのか、明確に区別していない点にある。両者は特定商取引法上、規制内容が異なるため、その方法を子細に検討し区別する必要がある。
その判断基準の一つ目は、通信販売の「継続的取引関係にある顧客」に該当するか否かである。「継続的取引関係にある顧客」とは「特定商取引に関する法律施行令」により「当該(電話)勧誘の日前1年間に、当該販売または役務の提供の事業に関して、2以上の取引のあった者に限る」とされている。該当する場合は「電話勧誘販売」の適用除外とされ、「通信販売」の規制の範囲内で良いこととなる。
二つ目は、「電話勧誘販売」の定義規程によって判断される。「電話勧誘販売」とは「事業者から電話をかけるもの」が基本であるが、「事業者の巧みな働きかけにより、消費者が電話をかけさせられ、その電話の中で勧誘を受けるもの」も対象であり保護措置を受けることが適当であるとされている。具体的には、ビラやパンフレットを配布し「勧誘をするためであることを告げずに電話をかけることを要請」したり、「何らかの商品を販売する意図は告げているものの本来販売しようとする商品について告げずに電話をかけさせるもの」とされている。
一方で「新聞や雑誌等に掲載されている通信販売広告や商品広告により消費者から自発的に電話をかけた場合には、その電話の中で事業者が売買契約等に関する契約を行ったとしても、電話勧誘販売に該当せず、通信販売に該当する」とされている。
ついては、事例①~③については、一つ目の基準によって判断する。営業活動を行うこと自体は差支えないが、明確に「継続的取引関係」にある顧客とそうでない顧客との線引きを行う必要がある。後者の顧客群については、「電話勧誘販売」としての規制、例えば法定書面の交付義務をはじめ、クーリングオフ制度の適用などがあることを認識する必要がある。
なお、④についても、あくまで勧誘の対象となる顧客は「サンプル品」の無料配布客であり、それをもって「継続的取引関係にある顧客」であるとの判断は難しい。
⑤については、前述二つ目の判断基準が関連する。基本的に「通信販売」の範囲での営業活動であり、「電話勧誘販売」には当たらないが、慎重に行いたい販売方法である。顧客への勧め方によっては、苦情になるケースも予想される。あくまでも「広告商品」を受注することが主要業務であり、「定期購入」は参考程度の案内であるとの考え方が根底にあれば、案内のトークも穏やかとなり、自ずと「電話勧誘販売」ではないかと誤解される可能性も低くなると思われる。ついては、オペレータトークの内容を確認し、必要に応じて改善することも考えられる。

 

■相談室長より

通信販売と電話勧誘販売の規制の差を認識し顧客との末永い信頼関係を構築してほしい

今回はよく似た5事例を挙げましたが、他にも同様の相談が多く寄せられています。
また消費生活センター等から「通信販売を標ぼうしつつも、実際には電話勧誘販売も行っていると思われるのに、法定書面の交付等を怠っている事業者があるのではないか」との厳しい指摘を受けることもあります。
特定商取引法改正の経緯をみると、いわゆる資格商法による強引な勧誘などのトラブルに対応して、1996年に従来通信販売の類型として判断されていた電話勧誘販売が、通信販売とは別の取引形態として規制を受けることとなりました。したがって、もともと混同しやすい販売方法ではあったものの、現在では大きく規制内容が異なっています。ついては、事業者は特に法定書面交付の義務化及びクーリングオフ制度の導入等、訪問販売に類似した規制がなされていることに留意する必要があります。
言い換えれば、一見よく似た内容のアウトバウンドであっても、通信販売と電話勧誘販売とでは、規制が異なることを十分認識したうえで、営業活動を行うことが必要です。具体的には、例えば、アウトバウンドチームを二つに分け、通信販売の延長線上で行うチームと電話勧誘販売として行うチームに分けて行うなどの工夫が望まれます。
いずれにしても、電話を受ける消費者にとっては、その勧誘内容や方法によって、事業者に対する印象が大きく変わる可能性があります。
その場しのぎではなく、末永い信頼関係を構築するための営業活動であることを念頭におき、顧客との信頼関係を強めこそすれ、損なうことがないように努力することが大事であると考えます。

消費者相談室長 八代 修一

顧客対応の相談は 03-5651-1122まで(平日10:00~12:00/13:00~17:00)

 

 

 

 

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